第208章

刃を島宮奈々未の喉元に押し当てているのは女だった。顔には狐の面。

丹羽光世が直々に「地煞の狐は処理した」と言っていた。なのに、どうしてここに――。

面の奥で、天瀬姫奈が鼻で笑う。

「地煞の人間なら、誰だって狐になれるのよ」

島宮奈々未は腑に落ちた。

狐は、ただの符号だ。

一匹消えても次が出る。何十、何百と同時にいてもおかしくない。丹羽光世が始末した「狐」だって、彼女を最初に狙った人間とは限らない。

面を被ってしまえば、下の顔が何度入れ替わったかなど誰にもわからない。

そして今も――この面の下が誰なのか、奈々未にはわからなかった。

島宮奈々未は必死に動揺を押し殺し、疲れたよう...

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